クロッキーとデッサン力
クロッキーは、スケッチと混同されることもありますが、スケッチよりももっと素早く描くことが本来クロッキーと呼ばれるものです。一般的には10分以内で描くものをクロッキーと呼ぶことが多いのではないでしょうか。何分かけなければいけない、という事はありませんが、短時間であればあるほどスケッチではなくクロッキーになっていきます。5分程度で一枚のクロッキーを仕上げる人も多いですし、人によっては1分程度でどんどん描いていく人もいます。スケッチに比べても、より短い時間で描くことがクロッキーだといえます。
このクロッキーは、静止しているものをじっくり眺めるデッサンとは異なり、場合によっては動いている物や人を見ながら行なわれることもあります。クロッキーの目的は、短時間でその対象物の特徴を捉えるということです。ですから一瞬で見たものを記憶できれば、動いているもの、しかも複雑な動きをする生き物もどんどんクロッキーで写し取っていくことができるのです。いずれにしても、クロッキーはデッサンのようにじっくりと一枚の絵と向き合う訳ではありません。文字で言えば要点のみのメモ書きです。ではクロッキーをこなす事と、デッサン力を上げる事には何らかの繋がりがあるのでしょうか。
人物デッサンを例にして考えると、基本的にモデルは動くことはありません。つまり、どうしても人間が静止できるポーズしか描かないことになるわけです。短時間でのクロッキーを続けると、動きのある人物を描くことが上手になるといわれています。それは、人物デッサンとは異なり、動いている人物を描くことが可能だからです。クロッキーであっても、静止している人物ばかりを描いていたのではもちろん躍動感のある絵が上達する訳ではないのです。クロッキーは、変化して行くものを短時間で捉える訓練になります。時間制限がありますから、その特徴ももちろん短時間で見極めなければいけません。最初は難しいかも知れませんが、動きのあるもの、例えば何度も再生できる動画などを見ながらクロッキーをはじめてみるのはどうでしょう。