デフォルメとデッサン

 デフォルメとは、フランス語のデフォルマシオンの省略語です。デフォルマシオンは、変形させることや、歪曲表現を指す言葉。現代の日本では、この言葉は誇張や強調などの意味で持ちられていますが、こうした用法は日本独自のものです。もともと日本では浮世絵の時代から、誇張や強調などが普通の絵画表現でしたから、表現手法としてのデフォルメは、もともと日本にとてもなじむものでした。
 例えば漫画やアニメーションなどでは、キャラクターは実際標準的な人間の目の大きさ、その比率に比べてかなり大きく描かれています。人体構造も、普通の人間と比較しれば極端に足が長かったり、絵や足が大きかったりすることもあります。ですが私達は、そうした表現を「絵が下手」だからではなく、単純に絵の個性、表現の一種として受け入れることができます。ただ、デフォルメというのは、一種の記号でもありますから、リアルなデッサン力がなくてもなんとなく描けてしまうこともあります。ですが、極端に目が大きなキャラクターを、不自然だと思うか、そのような表現だと感じるかは、実はデッサン力が関係しています。多くの人に受け入れられるデフォルメとは、やはりデッサン力に裏打ちされた画力がものを言います。デフォルメが上手い人というのは、結局デッサン力がある人なのです。そうでなければ、10頭身の人間キャラクターや、2頭身の人間キャラクターは単純に絵が下手だから、そんな絵になってしまうのだろうと思われてしまいます。つまり、デフォルメに説得力を持たせるには、デッサン力が必要で、デッサン力がない絵は、描いた本人にとってはデフォルメのつもりでも他の人から見れば単に絵が下手なだけ、に見えてしまうのです。ですから、デフォルメを極めるというのは、実はデッサン力を身に付ける以上に難しいのです。デッサン力は、あくまでも絵を描く力の基礎に過ぎない、優れたデフォルメを見るとそう痛感せずにはいられません。

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