漫画とデッサン力

 日本を代表する文化、漫画。いわゆるコミックス、それを作り出す人たちの漫画を描く人は、デッサンをするよりも、漫画絵を描くことが楽しいという人ももちろんいますよね。ですが面白いことに、漫画としての絵が上手い人というのは、多くの場合、漫画絵ではなくリアルな絵を描いても、それなりに上手にデッサンが取れているということも多いのです。
 円の中に、小さな円を二つ描き、さらに三角形を付け加えれば笑っている人の顔に見えます。漫画は本来、こうした記号の集合でもあります。ですからデッサン力がなくても、記号をすることで漫画は成立することもあります。それなのになぜ、デッサン力がある漫画のほうが、上手い絵に見えるのでしょう。漫画は基本的にストーリーと絵が融合した表現です。ストーリーに説得力を持たせるには、絵にも説得力があったほうが断然有利なのです。そして説得力のある絵というのは、立体感を感じさせたり、登場人物の行動が絵で見て分かったり、どこにいるのか絵で見て分かり、どんな感情なのかも絵で見て分かるものです。文章で状況や感情を補足しなければいけない絵と、視覚情報だけで理解できる絵、どちらに説得力があるのかは言うまでもありません。もちろん漫画ですから、リアルな絵が描けるというだけが漫画に必要な画力ではありません。ですがデッサンができなければ、ほとんどの絵を自分のイメージから作り上げていくことも難しいのです。漫画に興味がないのなら、アニメーションでもいいですし、イラストでもかまいません。リアルではない絵を見て、その人のデッサン力を想像してみることをおススメします。そして上手だと思う絵を、自分ならイメージの力だけでかけるのかどうか一度試して見て下さい。といっても、別に模写という意味ではありません。その絵のパース、アングル、人体構造など、意外と勉強になることもあるのです。

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